2011年2月1日火曜日

学ぶことをやめたら

ガーナの教育用語にINSETという言葉があります。

日本語で言うところの、「校内研修」といったところでしょうか。


教職に就く前、すなわちpre-serviceの段階である教員養成校などで学ぶことも大事ですが、

教職に就いた後、すなわちin-serviceの状態でも学び続けましょうねということで、

in-service training、そのいくつかの文字を取ってINSETと呼ばれています。


論文やら研究授業やら各種サークル、教育図書などで学び続ける日本の先生からすると、

「あったりまえじゃーん、そんなの」と言われそうですが、

ガーナでは2005年からJICAの支援の元、この校内研修の普及や質の向上を求めています。


そのためには、まずはいくつかの地域を先だって育成しようということで、

「パイロット」と呼ばれるモデル地域が全土から10郡選ばれました。

そして、わがアカチもパイロットのひとつなのです。やるじゃん、オラの町。


と、ここまではJICA事務所での勉強会や配属先の資料で知ったお話。

英語、訳し間違えていたらゴメンナサーイ。



何はともあれ、まずは見てみないと。

今日は郡内全校で一斉にINSETが行われる日ということで、見学へ行きました。

教育事務所のINSETコーディネーターといっしょに、ある学校をバイクで訪問。


研修の方法は主に次の3つが提案されています。


「生徒を相手にした研究授業と協議会」(Demonstration lesson)

「先生が生徒役になって行う模擬授業」(Peer teaching)

「授業に活用できる教材開発」(Teaching - Learning Material; TLM)


今日は6年生のICTの研究授業です。(※ICT=情報通信の授業、主にパソコンとか。)



指導案もちゃんと用意して、



なんとパソコンも用意して、



しかも、電源も向こーーうの方から延長コードをリレーして、



気合いの入れっぷりが伝わってきました。その姿勢たるや、すばらしい。


にしても、この若い先生、緊張してたなー。

自分も研究授業とか授業参観の日はこんな感じだったんだろうなと、こちらまで緊張。



その後の協議会。カリキュラムリーダー(研究主任)が司会となって意見交換します。

参観した先生からは、

「パソコンのマウスの使い方、あれはアタシ知らないわ~。」

「CPU?あれ、もっかい教えてくれよ。」

などなど、自分もすっかり子ども目線になってしまい、なかなか授業分析にならない…。


そんな中、校長先生はズバリと言いました。

「先生の知識が豊富なのはよく分かったが、もっと的を絞って授業を展開するべきだ。」

おー、確かにその通りだ。

これをきっかけに、少しずついろんな意見が出始めました。



討論が一通り終わり、コーディネーターが総括しておしまいだと気を抜いた瞬間、

「ジュン、お待たせ。最後はあなたの番よ。好きなだけしゃべってちょ!」と校長先生。

うーん、どうしよう…。


ここまで参観して思い出した言葉がいくつかあって、

まずは、かつての勤務校の研究主任だった先生の言葉。

「教師がしゃべればしゃべるほどアカンな。できるだけ生徒にしゃべらせないと。」


もう一つは、自分が6組担任だった時の、2組担任だった先輩のつぶやき。

「教師が一方的に説明すれば3分で終わることを、50分かけて生徒に見つけさせること。

こうやって考えれば、だいたいの授業はおもしろくなるし、生徒は忘れない。」


さらには、糸井重里氏が言うところの、

「完成形で教えてもらうよりも、いっしょに考えながら、

いっしょに見つけるほうが、人間の興味をひく。」ということ。



というわけで、よかった所や参考にしたい点を挙げながら、


・授業のめあてが先生用になっているが、

子どもの言葉に置き換えると授業が魅力的になるのでは。

(※「生徒は5つのPC用語を説明することができるようになる」→ 例:「ネームカードを作ろう」)


・最終的に学ばせたいことを導入部でドンと見せるのも、一つの手。

(先生がカッコいいネームカードをPCで作っていたので、ぜひ活かしましょうと。)


・覚えさせたい用語は先生がたくさん説明しておしまいではなく、

できるだけ子どもがたくさん使って覚えられるような活動を取り入れてみる。


・黒板のどこに何を書くかを計画しておくと、先生にも子どもにも授業が整理される。


…ということが言いたかったのですが、果たして英語で通じるか不安だったので、

その場で「もしも自分だったら的妄想授業」をしてきました。


自分ですらできないのに、エラそうにね…。

通じたかなぁ、どう思ったかなぁ。


そして、授業は先生が何を話したかだけではなく、そこから子どもがどう学ぶかこそが大事で、

それを評価するには、子どもの様子や反応を見るべきだと思うので、

今度は子どもの様子も見た上でぜひ語りましょうね、

できれば協議会のテーマもあらかじめ決めておいて、とも。


だって、みんな後ろで椅子に座ったまま授業を見てるんだもん。もったいない。



「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」

(Roger Lemerre :サッカー・フランス元代表監督)ということで、

「先生たちのお勉強会」とどんな風にかかわるか、これも活動の核となりそうです。


がんばった先生を批判せず、温かな言葉で終始討論されていたのには好感がもてました。

こういうところ、ガーナええがなです。

9 件のコメント:

Hirono さんのコメント...

本当にそうだよね、私自身そう思ってます。そしてこの仕事についていろんなことに興味をもつようになって、知りたいって思うようになって、それが自分の生活も潤してくれていると思います。
 ここトンガでは、月に先生対象に毎月ワークショップを6回やっています。もちろん内容も考えるんだけど、先生たちに今は算数のことがんばってる、って、授業のこと考えてのぞむと子どもたちの反応が変わって面白いっていう経験いっぱいしてほしいなって思っています。
 ガーナもがんばってる!ってすごい感じました。いいところだね!!!

さち。 さんのコメント...

「完成形で教えてもらうよりも、いっしょに考えながら・・・人間の興味をひく。」って、ホントにそうだと思います。
私は、現地の先生に何かを伝える時、語学力が足りないので、一緒に用意したり、説明してもらったりする。
初めは、語学力のなさに「こんなことも一人でできないなんて・・・」落ち込んだりもしたけど、その分、一緒に考え、一緒に見つけていける活動になっていたのかな~と。
ちょっと自分に甘いですが(笑)思えるようになってきました。
じゅんちゃんのブログからも学ぶこと・気づくことがたくさん。
学んでいくことって楽しいよね♪

Ayu さんのコメント...

おーなるほどねー!
ネットの調子が悪く、久々に見に来たよ〜ご無沙汰していてごめんね。
私も看護師隊員だけれど教育委員会配属で、保健衛生について学校を回って教えたり、日本語したり、さらにはなんとあさってから体育まで教えるんだけどね・・・いつも保健の授業をして思うのは、こんなんでいいのかな?っていうこと。結局は子どもたちはちゃんと覚えられていないし、ただ私たちがやって満足っていうだけで終わっていないかと。
インパクトを与えるとか、子どもたちに考えさせるとか、それはすごく私も大事だと思って、自分で教材作る時にはいろいろ考えるんだけれどね、やっぱりこっち流の教え方はそういうんじゃないんだよね、残念だけれど。
話は変わって、やっぱりプロジェクトが入ると違うのかな?その先生たちだけの勉強会は、日当や交通費も出ちゃってるの?どういう経緯で開かれるようになったんだろう?プロジェクトだったとはいえどうやって先生たちが勉強会をする意欲を引き出したんだろう?いろいろきになるポイントがありましたー。私も先生たちの講習会できたらなーっていうのはあるんだけれど、思いつくままに提案するだけだと、面倒なことをしたくない職員にはすぐに流されちゃうからねー。
すごいねーがんばってて!また先生視点からのいろんな考えや学校教育ガーナの面白さをこうして見れるのを楽しみにしています☆

Kofi Jun さんのコメント...

Hironoちゃん!

月6もワークショップやってるのか?ほえ~、それはすごい。
いずれはそういうこともやってみたいんだな。
フィリピンとかでもやってるみたいだし。
日本とは違う文化の中で先生に伝えるってのは、簡単じゃないよね。
またノウハウ教えてね、skypeで!
なんならFacebookでも!
ラブリーなコメントありがとう!


さっちゃん!

いやいや、よくフランス語でやってるよ。ほんと、すごい。
ところでモロッコは大丈夫?
エジプトはどうやら一時的に帰国するみたいで…。
みんな無事に2年が終わればいいけど…。
俺たちも2年後無事にジャスコかコメダで会いたいしねぇ…(笑)
プリティなコメントありがとう!


AYU!

マダガスカルでラジオを使って啓発だっけ?
あれ、すごいよね。
マスコミ使ってるー!とビックリしました。
教育事務所にはそれなりの予算がINSETのために下りている「はず」なんだけど、
指導主事とかは「交通費がないから遠くの学校まで見に行けない」と嘆いているよ。
各学校にはほとんど下りてないんじゃないかな?ちょっとあやふやです。
研修そのものにはほとんどおかねはかからないはずだから、別にいいとは思うのだけど。

ところで、日本はセミナーとか受けるとなると、参加費を払うよね。
その日のお弁当なんかも、もちろん自前で。
でも、ガーナは主催側がご飯などを用意して「招待」しないと来てくれないの。
セミナーで学んだことが、自分に還ってくるという考えがないのかなぁ。
うちのカウンターパートはそんなガーナの文化を嘆いています。(すごい!?)
なかなかワークショップをやるにしても、難しいよねー。

自分はぼちぼちゆっくりやります。まっぽんも無理しすぎないでね!
キュートなコメントありがとう!

としゆき さんのコメント...

フィリピンにもinsetという言葉あります。でも,実際のところはどうなのか,図りかねいるところです。フィリピンでは,点数重視・結果重視なところが大部分をしめ,思考力などを高めようという部分はおろそかにされがちです。ご存じのように,現在SAMURAI6プロジェクトを立ち上げ,束になって,その壁を石川五右衛門のざんてつけんのように切り裂こうとしています。
じゅんさんの先輩たちの言葉,そのとおりだと思います。とにかく,教えることが多い教科書を教えるだけで精一杯の先生たちに,私たちの考えを理解してもらうにはかなりの時間が必要ですが,焦らず,進めていこうと思います。何か,良い情報があったら教えてくださいね。ユーラシア,アフリカを挟んで,いろんな活動を共有していきましょー(^^)/。

Kofi Jun さんのコメント...

としさん!

サムライの活動、興味深く追い続けてますよ!
すごいことになってますねぇ、フィリピン隊キレキレで強力ですからねぇ!
さすがの一言です。

点数重視、結果重視なのはこちらもいっしょかも。
もちろんそういうことも大事だから否定はしないけど、
でももし点数や結果を重視したいなら、サムライが目指す「思考力」というものこそ大事になるのになぁ。
結局のところ、「今まで出会ったことのないことに出会った時に、いかにそれを解決するか」ですもんね。
遠回りでも的外れでも全然ないということにフィリピンの人が気づいて感動してくれることを、めちゃ期待してます。
ていうか、もうすでにそうなっているか。
サムライの勇士は、ボクたちの勇気。

オフの過ごし方は、またメールでご指導くださーい!

Ayu さんのコメント...

そうだね、主催者側がお金を払ったりご飯を出すのは、きっと援助をされてきた途上国の避けられないところだよね。カンボジアでもそうだったよ。
多分ガーナでもどこかのNGOとか国際団体が何かプロジェクトをする時に、日当とか交通費とかを払ってしまったことがきっかけなんだろうねー。1回やってしまうと、次もないとどうしてこの前はあったのにーってなっちゃうから、初めてのプロジェクトをする時にはどんな大きな国連機関だろうが、考えて欲しいなーと思うところだね。
いやいや、ぼちぼちにしてはすごい活動してるなーと感心します。

むっく さんのコメント...

じゅんじゅん、活動お疲れ様です。
すごく久々にブログ拝見しました。
この投稿を読んで
「あ!だからじゅんじゅんあの時あそこで立って私の授業を見てくれてたんや~」
って思いました。
あのタマレでの授業交流会の時のことです。
生徒の反応や様子を見てくれてたのね。
なるほど・・・。

またいろいろ気付かせてください。
ありがとう。

Kofi Jun さんのコメント...

むっく!

いや、タマレの時は単純にむっくの写真をバシバシ撮りたかっただけだった気がしますが、そこらへんはノーコメントでいきます(笑)

今度アカチでやる時も、よろしくね!